選定の刻

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その子はボソッとしたを向いて言った。 「そ、そか。もうすぐ家なんだね。なら気をつけ……」 僕は言葉を阻まれ、その子は不審に笑い出した。 「フフフッ。もうすぐだ。もうすぐ僕は歴史に残る大いなる戦いの序章に参加することになる。」 なんだ?病気か?その類の病気なのか? しばらくその子の話を聞くことにする。 「君はのんきだねぇ?この島の異変に気づいてないのかい?」 俺はきょとんと答えた。 「い、いや、俺は特に何も……」 そう言うとその子はフッと鼻で笑い、ローブのポケットに両手を入れ、島の中心に君臨する噴山を見上げた。 この島にいれば、噴山はどこにいても見ることができる。それほど巨大な山だ。 「そうか…それは残念だね。なら君はグリモワールの選定者になれなかったようだね。選定者なら魔力が共振して何かを感じられるんだけどね。なら君は自分の命を守ることだけ考えておきな。」 言葉が出ないし話についていけない。俺はわからないまま黙り込んでいた。 魔力とかほざいてるのだから。よほどの重症なのだろう。 でも顔立ちからして、日本人では無さそうだ。そんなに外国人が島にいるとかは聞かないし。何者なのだろう? そんなことを考えていたら、またその子が口をひらく。
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