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鳩と燕はアパートに住んでいる。
ツリーハウスに住んでみたいなぁ、と、濡れた髪をタオルで揉みながらこぼしてみると、それもいいかもねと鳩は笑った。真っ白な壁と白を反射するフローリングに囲まれた一部屋しかないこの場所で、私は大抵の時間を眠って過ごしている。
大きなクジラのクッションを潰すように抱き抱えて、隅に転がって目を閉じるのだ。そうしているうちに、ときおり浮かぶ水面はオレンジに染まり、虹色に変わる頃、玄関から音がして目を覚ます。
鳩は部屋にいない。朝はすぐにどこかへ行くし、夜はすぐに寝てしまう。鳩がいない部屋は恐ろしいほど面白くないため、鳩がいる時間に起きているよう心がけたら、私は完全に夜行性生物と化していた。
今日は雨が降る、と。
昨夜、自信たっぷりに天気予報士が傘のアイコンを叩いていたから、期待していたんだ。昼間にも関わらず目をかっ開いて、曇天を今か今かと見上げていた。ぱらぱらとでも降ってくれたら、少しは我慢出来たかもしれない、のに。
「あーぁ……お前これぇ」
素っ頓狂な声が聞こえた気がしたけれど、一目散にクジラに駆け寄って、顔を埋めて、シャットアウトした。話しかけないでください。あなたの話も聞きません、という意思表示。クジラが湿ってしまい、少し申し訳ない。おい、と咎める声は、頭の上から降ってきた。
「燕ぇ、悪いことしたってのは分かってるんだよね?」
「しらない、から」
「じゃあ顔あげて」
「だから、知らない」
「卵嫌だった?」
「っちがう!!」
クジラを跳ね飛ばす。
確かめた彼の表情は、なんにも笑っていない笑顔だった。
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