ただ虚しいだけの燕

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「燕、ちゃんと食べろ。朝だけでも」 何と言ったらいいのか。 笑っているけれど笑っていない彼は、いつも切羽詰まったような感情を耳に感じさせるから。 「…ごめん…なさい」 素直に謝らなきゃと、頭の中にいる達観者気取りの「小さな私」が勝手に判断してしまう。謝ることじゃないけどさ、と鳩は難しい顔をして髪を掻いた。 「本当は昼飯も、ね。お前、動かないくせにどんどん細くなってっちゃうし、……昼間は一緒についててやれないし。今日は帰ってきたらシャワー浴びてずぶ濡れになってるわ、朝ごはんはゴミ箱に捨ててあるわ……荒れてた?」 「雨に、あたりたかったのに」 「……」 「だって昨日、雨降るって」 鳩が何も言わない。ちょっとまずい。怒っているかもしれない。いや、怒っているんだろうけど、程度がまずいかもしれない。 「……鳩」 お願い、怒らないでほしいな。 跳ね飛ばされ、再び腹を見せて横たわるクジラを横目に、私は鳩に手を伸ばす。掴んだ腕には骨の硬い感覚ーーーー鳩だって相当細い。長身の身体にジャラジャラとした飾りをつけて外見を飾り立てて、染めすぎて色の落ちたバサバサの髪をしている彼の威圧感はとてつもないけれど、実体はとても華奢な腕と腰の持ち主だ。 少しの思案の後、ぎゅうと首に巻きついて、ぎゅうぎゅう締め付けた。うえぇギブギブ、なんて呻きのような悲鳴が、私の心を踊らせる。 「鳩ぉお」 「んー、うん、分かった。分かったから」 鳩に笑顔が浮かぶ。ほっとした。 「でもそれとこれとは話が別」 あ、くそう。 「食べるの面倒なん、だもん」 「いや面倒ってさ……何が?」 「箸とお椀を持たなきゃいけないところ」 「……じゃあ、パン食べよう。今度からパンを置いてくから」
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