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「ぐふっ…………愛情がバイオレンスだぜ…………」
「はいはい。さっさと家に入りなさいねー」
純白のコートを靡かせながら、呆れ顔でアリサは言う。
彼女はロランの背中を押しながら、扉を開け、家の中に入っていく。
ロランは何気ない動作でそこらに投げ出していた黒の法衣(普通は白。不良法師は無視して特注したが)をひっ掴みながら、
(アリサ、俺が『救世巡礼』に行くこと、絶対納得しねえだろうな。最悪、一緒に行くとか言いそうだし)
財布は持っている。
出来れば食料なども持っていきたいが、やむを得ないだろう。
(なんか怒ってるし、メンドーなことになる前にトンズラしますかね)
「お兄ちゃん。そう言えばイリーヤさんって人と何を話していたの? あの人が家に来たとき、アリサだけのけ者にされたから、なにもわからないんだけど」
(最初に『救世巡礼』の『説明』しに家まで来やがった時の話か)
「―――、」
(異世界人……それも評議会の奴とアリサを接触させられるかっての。ナニされるかわかったもんじゃねえ)
ロランは立ち上がり、黒の法衣を着ながら、吐き捨てるように言う。
「アリサが気にすることじゃねえ。あのクソ女のことは忘れろ。もう俺たちと関わることはねえだろうし」
「…………お兄ちゃんってホント異世界人嫌いだよね」
「勝手にやってきて、勝手に大陸を統一して、勝手に文明を不自然な速度で発展させて―――つまんねえ公害をばらまく奴等を好きになれるか」
文明の発展自体を否定はしない。
が、不自然な文明の発展は『異世界人に依存する状態』を作り出す。
なにせ、技術レベルが違いすぎるのだ。
努力で到達できないほどに。
現に今の世の中は異世界人が中心になってきている。
身の回りのものさえ『大陸の人々』では修理もできないほどに。
「チッ。胸くそ悪いな。俺らは奴等がいねえと生活もできねえレベルにまで落ちぶれるんじゃねえか?」
「だからって異世界人が来る前までの生活水準で生きていこうとしなくてもいいと思うけどね」
アリサの意見は最もだと思う。
他の村は近代化が進んでいるし、ロランたちだって異世界人が生み出した恩恵に頼っていないと言えば嘘になる。
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