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アリサが話題を変えるために口を開く。
「お兄ちゃん。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「なんだよ?」
慣れた手つきで法衣を着ていくロラン。
トンズラは早いほうがいいだろう。
「どこか行くの?」
「あー…………。えっとだな…………」
ロランは首を鳴らしながら、
「仕事だ、仕事。法師様は忙しいもんなんだぜ」
「うそ」
速攻で見抜かれてしまった。
「は、ははは……なんで愛する妹に嘘をだな―――」
「お兄ちゃん、うそつく時、首を鳴らすもん」
「マジかよ!?」
「うそ」
…………、見事に騙されました。
「お兄ちゃんは悲しいよ。アリサが嘘をつく女の子に育つなんてさ」
「あっそ」
「妹が素っ気なさすぎる」
「で? どこに行くの?」
行き先か、とロランは呟いた。
『救世巡礼』が『西遊記』をベースにしているなら、最終目的地は―――
「―――天竺だな」
「天竺? そんな所に何しに行くの?」
「世界でも救いに」
「ふぅん」
「素っ気なさすぎる返事をありがとう」
着替え終わったロランは軽い調子で呟き、何気ない動作で壁に立て掛けてあった黒光りする刀を掴み(平気で刃物を所持するのも不良法師だからか)
「じゃあ一ヶ月くらい家をあけるが、頑張れよっ」
このくらい軽いノリで行けば、冗談だと思ってくれる。
一ヶ月はいなくなることは伝えているし、仕事だと思ってくれるかもしれない。
―――なんて考えは甘すぎた。
「私も行くっ」
「ちくしょう! やっぱこうなったか!!」
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