3人が本棚に入れています
本棚に追加
玉龍。
三十後半でありながら、衰えるどころかより綺麗になっているんじゃあ……? とまで思われる女性。
主に仏教の布教に勤める『僧』として各地を転々としている。
大陸が統一される前には『自主的に』仏教の布教活動をしており、布教のためなら反乱や部族間の衝突にまで首を突っ込んでいたとか。
今は大陸が統一されて誕生した『統一国家』に所属し、国教となった仏教を変わらず広めている。
『統一国家』の頂点は『皇帝』だが実質は評議会が権力を握っている。
が、玉龍は評議会に忠誠を誓っているわけではなく、すべては布教のため、と公私共に宣言していた。
異世界人嫌いのロランとはこの点で気が合ったのか、それとも同じく『統一国家』に所属している『法師』であったからか、彼らが仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
「玉龍さん。お願いがあるんですが」
「なにかしら?」
ロランは玉龍に頬擦りしているアリサを見ながら、
「一ヶ月ほど、アリサのこと頼めませんかね? その、『統一国家』には俺のほうから休みの延期を申請しておくので」
妹は玉龍になついているから、彼女さえ家にいてくれたら、すべて上手くいくはずだ。
あとでイリーヤにでも玉龍の特例を認めさせないとな、と軽く考えていたのだが、
「私としてはすぐにでも布教活動を行いたいんですがね」
「うぐっ。そういや、玉龍さんって根っからの布教体質でしたっけ」
穏やかな笑みでグイグイ布教しまくり、異民族や異世界人さえ呑み込んだ伝説を持つ玉龍に一ヶ月も『布教させない』ほうが難しいじゃねえか……。
なにせ、玉龍は布教のためなら何でもやる女なのだから。
こっちを説得するほうが大変かもな、とロランが半ば諦めかけていると、
「まあ、別にいいんですけど」
「いいんかい」
呆気なく説得できました。
最初のコメントを投稿しよう!