第一章 孫悟空との遭遇

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これで心置きなく出発できる。 缶詰や干し肉、乾パンなどの保存食やミネラルウォーターを鞄に詰め込みながら、ロランは思う。 (ホント、進歩したもんだ) ミネラルウォーターはペットポトルなんてものに入っているし、缶詰の形に金属を加工する技術など、五年前には存在すらしなかったのだから。 他にも火種を使わず火を生み出すライター、食品を長期間保存できる冷蔵庫なども格安で手に入るし、少し歩けばビルなどの高層建築物なんかも建っていたはずだ。 (イカれてやがる。文明が異常なレベルで発展しすぎだろ) とはいえ。 くだらないプライドで使える物品を使わないのは馬鹿のすること。 過酷であろう旅に備えて、できることはするべきだ。 (さっさと『旅のしおり』でも確認しとくか) 食料庫を漁っているロランを放って玉龍とアリサがガールズトークに突入していることだし、今の内に読んでいたほうがいいだろう。 「えーっと、なになに」 内容は以下の通りだった。 『「救世巡礼」は「西遊記」をベースに行う儀式である。本儀式は「西遊記」という原典に則って進行させることになるが、完璧を目指すと莫大な時間が必要である』 「まあ、そりゃそうだ。あれ、百回くらいあったし」 『なので本儀式は必要最低限の巡礼で済ますことができるように調節することにした。具体的には「三蔵法師」「孫悟空」「沙悟浄」「猪八戒」の四人が天竺に到達すればいいように』 「そりゃいい。予想以上に楽できそうじゃん」 『各人の出逢いやエピソードによって「補強」を行うが、これらは最悪成し遂げられなくも本儀式は成功するはずだ。だが、これはあくまで理論上のこと。確実に成功させるためにも、「補強」を怠ってはならない』 どうやら『補強』とやらは次のページに書いてあるようだ。
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