序章 滅亡へのカウントダウン

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「だりぃ~。もー全体的にやる気出ねえ~」 『法師』と呼ばれる男が小高い丘の上で寝転がっていた。 肩までかかるほどの黒髪に、燃えるような紅い眼をした男だった。 一応、僧侶であるのに、着ている服は上下黒のラフな格好である。 この格好が『不良法師』と呼ばれる一因であろう。 『法師』とは法術という異能を使い、『統一国家』を守護する兵士…………なのだが、五年前に突如襲来した異世界人によって大陸が統一されてるせいで、賊退治や雑務くらいしかすることがなくなっていた。 だからこそ、この男は『法師』になったというのに、 「だりぃよ、メンドーだよ、なにもしたくねーよ」 ごろごろごろ、と。 雑草を押し潰しながら、男は転げ回る。 世界は滅亡の危機にあるらしい。 だから『皇帝』は『西遊記』をベースに『救世巡礼』を行うことを決定したらしい。 そのメンバーの一人に選ばれたらしいのが、 「俺は一生寝てたいんだーっ!!」 夢は永久冬眠なんて語る『法師』ロラン=エリティカ。 先天的に『三蔵法師』と似かよった性質を宿し、かの者の力を取得している男。 「ちくしょう。やってられるか。絶対逃げてやる」 うつ伏せで。呻くようにロランは言う。 (救世だかなんだか知らないが、俺はメンドーなのは嫌いなんだよ。っていうか、異世界人に従うってのが気に食わねえ) 『説明』にやってきた異世界人を思い浮かべ、ロランは顔をしかめる。
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