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異世界人の評価では、昔のこの大陸は三國志並みの生活水準だったらしい。
それを近代(?)ってやつまで近付けたのは異世界人である。
その功績が認められたのか、裏でなにかがあったのか、異世界人たちの半分ほどは評議会という上層部に所属している。
「ハロー。お元気ですかネ?」
『皇帝』に次ぐ上層部。
その一人である女性イリーヤ=ソーファラー。
彼女は『救世巡礼』を拒むロランを説得するために小高い丘の上に来ていた。
彼女こそロランに『説明』しにやってきた評議会の一員である。
この暑い中、赤の着物の上から黒のコートを着た女はキラキラと不自然に光輝く金髪を靡かせている。
異世界人の象徴。
光輝く金髪を。
「いい加減、ご了承してくれませんかネ?」
「いい加減、帰ってくれませんかね」
ロランは適当な調子でそう言った。
十代後半の黒髪紅眼の男は欠伸混じりに続ける。
「なんで俺に構うんだよー。他のやつに押し付けろよー」
「こちらとしてもテメーみてーなカスを進んで使いたいとは思ってねーんだよ」
「素が出てるぞ」
ごほん、と切り替えるように咳をするイリーヤ。
「なにが不満なんですかネ? 『救世巡礼』は指定された道のりを歩み、指定されたことを成し遂げればいいだけというのにサ」
「メンドー」
ロランは一言で切り捨て、吐き捨てる。
未だに寝転がったままの不良僧侶をうざそうに見据え、イリーヤは言う。
「世界が滅べば貴方たち『は』滅びるというのに、随分余裕ですネ」
「ハッ。なんだ、その限定的な言い方はよ。まるでテメェらは死なねえって言ってるみてえじゃねえか」
「そう言ってるんですけどネ」
イリーヤは表情を変えない。
どうでもよさそうに、彼女は続ける。
「『救世巡礼』の最大のキーは『三蔵法師』ですヨ。つまり貴方なんですネ。わかります? 貴方が動かないと何も始まらず、すべては滅びるんですヨ?」
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