序章 滅亡へのカウントダウン

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『救世巡礼』。 『西遊記』をベースに行う儀式。 元々『西遊記』とは唐の時代にインドへ渡り、仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵の長年の旅を記した『大唐西域記』を改変した伝奇小説である。 改変されたほうが定着した小説。 改変されたほうが有名になった小説。 有名とは、つまり、万人にとっての『物語』は『西遊記』であるということ。 原点がなにかなど関係なく、万人にとっては三蔵の物語は『西遊記』にされたということ。 万人が認めたことは『真実』となる。 誰かが否定した所で『多数の意見』は『少数の意見』をねじ伏せるのだから。 つまり。 改変の方向性を変えれば、望む『結末』を作れるということ。 無茶苦茶な理論だった。 理解不能な理論に基づき、計画は進められていった。 どのようなものを用いたかは不明だが、『改変されたことが真実になる』という一点が『救世巡礼』を形作った。 原点の『西遊記』と物語の大部分は変更されていないが、『結末』だけは明確に改変された。 『仏』は現世に降臨し、世界を救う、と。 「結局、『西遊記』の結末を変えて、なにがどうなるんだ?」 「あ、そこら辺を説明してなかったですネ?」 イリーヤは言う。 「『西遊記』は元々実際にあった出来事を改変して作られた物語です。現実を改変した物語なんです。なら『改変された物語』も現実となるはずじゃありませんかネ?」 ……………………………………………………。 「頭、大丈夫か?」
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