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「チッ。メンドーなことに巻き込まれたモンだな」
黒髪紅眼の男が疲れたように言った。
ロラン=エリティカ。
先天的に『三蔵法師』と似かよった性質を宿した男。
彼は恨めしそうに呟く。
「全部あの女のせいだ、くそったれ」
世界は滅亡の危機にある。
生き残るには改変された『西遊記』と同じ行動を取り、『物語通り』に結末を迎えなければならない。
そのための道しるべは一冊の薄い本。
『旅のしおり』。
「家帰ってじっくり読んどかねえと後々困りそうだな」
『救世巡礼』が『西遊記』をベースにしていることは知っている。
だが、具体的に『どこまで』再現すればいいかなどは不明だ。
情報は『旅のしおり』のみ。
イリーヤに聞く方法もあるにはあるが、異世界人嫌いのロランにそんなことができるはずがなかった。
(アイツラはなんか気に入らねえんだよな。いきなり俺らの世界に来て、好き勝手に暴れまわるアイツラだけは)
ロランは人種や言語、宗教などで差別をするような男ではない。
が、異世界人だけは好きになれなかった。
(チッ。これもくだらねえ差別なんだろうな)
そのようなことを考えていたら、丘を下り、村まで帰っていた。
木造のボロッちい家が立ち並ぶ村。
近代化が進む大陸にしては珍しい『三國志並み』の風景が広がっている。
(俺らにとってはこれが普通なんだよな)
村人とあいさつしながら、ロランは自らの家の前まで来た。
問題はここから。
(さてと。アリサになんて説明するかね)
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