第一章 孫悟空との遭遇

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1 「チッ。メンドーなことに巻き込まれたモンだな」 黒髪紅眼の男が疲れたように言った。 ロラン=エリティカ。 先天的に『三蔵法師』と似かよった性質を宿した男。 彼は恨めしそうに呟く。 「全部あの女のせいだ、くそったれ」 世界は滅亡の危機にある。 生き残るには改変された『西遊記』と同じ行動を取り、『物語通り』に結末を迎えなければならない。 そのための道しるべは一冊の薄い本。 『旅のしおり』。 「家帰ってじっくり読んどかねえと後々困りそうだな」 『救世巡礼』が『西遊記』をベースにしていることは知っている。 だが、具体的に『どこまで』再現すればいいかなどは不明だ。 情報は『旅のしおり』のみ。 イリーヤに聞く方法もあるにはあるが、異世界人嫌いのロランにそんなことができるはずがなかった。 (アイツラはなんか気に入らねえんだよな。いきなり俺らの世界に来て、好き勝手に暴れまわるアイツラだけは) ロランは人種や言語、宗教などで差別をするような男ではない。 が、異世界人だけは好きになれなかった。 (チッ。これもくだらねえ差別なんだろうな) そのようなことを考えていたら、丘を下り、村まで帰っていた。 木造のボロッちい家が立ち並ぶ村。 近代化が進む大陸にしては珍しい『三國志並み』の風景が広がっている。 (俺らにとってはこれが普通なんだよな) 村人とあいさつしながら、ロランは自らの家の前まで来た。 問題はここから。 (さてと。アリサになんて説明するかね)
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