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「あー・・だるい」
伸びをしながら黒い彼女が言った。黒い彼女がこの世界に生まれて早300年が経った。
最初の10年間は他人さんと過ごしていた。
黒い彼女は、黒色で腰まで届くほど長い髪、今にも寝落ちしそうなほど微睡んだ黒い瞳を持っており、全身黒い服に身を包んでいる。
そして160cmほどの身長でスレンダーな体型。
他人さんからみると人間に見えるが、存在自体が人間とは思えないらしい。ちなみに種族はわからない。人間みたいに見えるけど人間ではないのではないかと言われてきた。
「あの頃は楽しかったなあ・・」
あの頃、今から290年も前だけどつい昨日のことに思える。それだけ楽しかった。
他人さんとはあまり話さない関係だったけど居心地はよかった。
なぜこんな過去話をしているのか。それは、今あなたが見ている書物は私の日記だからだ。
ついさっきあることを思い出したからこの日記を書いている。
他人さんは商人だった。国から国へ国境をまたぎ商品を運ぶ。
その他人さんからついてこないかと聞かれ、ちょうど商品の書物に旅は道連れという言葉があったから、この人について行くのもいいかなと思ったのだろう。
私は申し出を受け入れた。
これが他人さんと私の出会いだった。
今になって思うと私は奇妙であるが故に用心棒扱いだったのかもしれない。
他人さんが戦っているのを見たことがなかったし、それにしては他の人もいないし、山賊はでるわモンスターはでるわでことあるごとに、私が撃退していたからだ。
「なるほど、私は体のいい用心棒だったのか。だから話す必要も無かったと」
そのころの私はこう結論づけた。
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