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 今日は8月23日――赤谷いつきの命日で、長女を除いてお墓参りに行き、帰りにここへ寄った。結婚してからも、この時期に帰省してお墓参りをすることは変わっていない。むしろ、そうしようと言ったのは伊月だった。そう提案した真意については深く聞かなかったので分からないが、りょうはそう言われて嬉しかった。  子どもたちには『お母さんの大事な人』とだけ伝えている。  波が迫り来るときは逃げ、引いていくときは追いかけるを繰り返して楽しそうに遊んでいる自分の息子を見つめて、ふと思う。  赤ちゃんのころからお風呂が好きなのは分かっていたが、四歳のときに「みずのなかがたのしい! いっぱいおよぎたい!」と言われたときは、りょうに衝撃が走った。  “いつき”に似ているのかもしれない――。そう思わずにはいられなかった。 「帰るぞー」  伊月が次男を抱きかかえて、迎えにやってきた。抱きかかえられた次男の顔を見て「眠そう。さっきあんなにはしゃいでたのに」「あぁ。相変わらず急にスイッチ切れるよなぁこいつ」頭を優しく撫でる。 「置いてくぞ。おじいちゃん家遠いのにいいのかー」  相変わらず海辺で遊ぶ長男に声をかけるも、夢中になっていて中々戻ってこない。そんな自分の子どもを見守りながら、伊月の隣でりょうが呟いた。 「……ほんと、水好きね」 「そうだな。いつきさんが水の楽しさ教えてたりしてな」 「そうだったら面白いけれど」  そんな言葉を交わした二人は口元に笑みを浮かべ、満足げな顔つきでやっと戻ってきた長男の手を繋ぎ、四人で海を後にする。りょうが着ていた白いワンピースの裾が心地良い風に踊るように靡いた。 終。
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