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「千裕、あのね……私、千裕の事が――」
『好きなんだ』
って言葉が口から出る前に、私の口は千裕の唇で塞がれた。
温かくて柔らかいその感触は、それが千裕の唇だと認識するにつれ徐々に熱を帯びてくる。
このままだと溶けて千裕の唇と同化してしまいそうだ。
「それ以上、言わないで。俺が言いたいから」
ゆっくりと離された唇から吐息に混ざった千裕の声。
もっと……なんて、はしたない気持ちをグッと押さえ込むと、それを察したかのように再び落ちてきた唇。
ゆっくりと瞳を閉じると
「コラ、誘惑すんな」
って怒られた。
そして再び千裕の胸のなかに閉じ込められる。
「咲、俺からちゃんと言うから、待ってて。今はまだ中途半端だから。この合宿でちゃんと結果出す。レギュラーきめるから。そしたら、ちゃんと俺から言う」
『分かった』って返事を込めて、千裕の背に手を回し、今度は私の方からギューッと力を込めて抱き締める。
するとハァーッと盛大なため息が振ってきた
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