プロローグ

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ここ、ガルバディアでは、数百年に渡り獣人と人間がいがみ合っていた。 数十年前には大きな戦争もあり、それによりこの二つの種族の間にはますます大きな溝ができたのだった。 その戦争では獣人に軍配が上がり、当時、獣人の王であったウルフマン4世は、人間が獣人の領域へ立ち入ることを一切禁止した。逆に、獣人が人間の領域に入ることも、同じく禁止した。 その一線が越えられたとき、そのときは互いに命の保障はしかねるとも公言したのだった。 それもあり、いつしか人間は獣人を恐れ彼らの領域には一切近づかなくなっていた。 獣人達も王の命を守り、人間の領域には一切近づかなかった。 彼らは一線を引いたまま、それからは大きな戦争やいざこざもなく平和に暮らしていた。 けれども互いに憎しみあっているのは変わらない。人間は特に、憎しみ以上に獣人たちを恐れていた。 先の戦では、人間は獣人の攻撃に全く太刀打ちできなかったのだ。そのこともあって、人間は獣人を恐れていたのだった。 また、獣人は人間を憎み忌み嫌っていた。 力のない弱い生き物のくせに、我が物顔で森を破壊し、そこに村を作ったりする人間が嫌いだった。 力がないくせに頭だけはよく、あっという間に文明が発達していく様子も、獣人にとっては理解しがたいものだった。 ガルバディアには、人間と獣人のほかにエルフも存在していた。 だが、エルフたちは人間と獣人の戦には我関せずと森に結界を張り独自に暮らしている。 エルフ達も頭のよい種族で人間より遥かに賢い人種だったのだが、エルフは森とともに、自然とともに生きることを重要視している種族のため、森や自然を愛する獣人達とはもめることもほとんどなかった。 というより、エルフは自分達の種族以外には興味がないせいか、他の種族との接触を極力避けていたのだった。 獣人も人間も、結界を張り他の種族の進入を避けているエルフの領域にわざわざ入り込むようなことはしなかったため、エルフとはどちらの種族も争いになることはなかった。
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