春の匂い

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「受かってた!!」 その一言から始まった今年の春。 マフラーをギュッと握り緊張して歩いてた私は立ち止まった。 「…ほんまに?」 「あほやねぇ!こんな時に嘘つく人いーひんわ!」 冷たい風がぴゅうって吹いてるはずなのに、体が熱い。 「やったぁぁぁぁぁ!!!!!」 月村夏姫。 第一志望の大学に無事合格できました。 どうしても行きたくて仕方なかった憧れの大学。最後までずっとD判定だけど諦めきれなくって受けた大学。 神様いるんやな。 泣きながら歩いて、心の中で呟く。 周りの視線が痛いのは分かってるけど涙止まらへんのやもん。 身に覚えのある着信音。鼻をすすって長年使っているガラパゴスケータイ所謂ガラケーを取り出す。 「…もしもし」 「ちょ、夏姫!?俺や!受かったんやって!?」 …お母さん喋んのどんだけ早いんやろか。 「…トモ落ち着こ。うちも信じがたいねん。…受かりました。」 大親友の伊勢智弥。 電話越しにも伝わるぐらい喜んでくれてる。 「やった!俺めっちゃ嬉しいわ!どうしよ!」 パーティーしよかっと盛り上がってるトモの声を聞くと笑顔になる。 中高6年間まさかの、ずっと同じクラスだった唯一の人物。 趣味も性格も一緒。 兄弟みたいな親友。 …のくせにトモのが本当にだいぶ頭良い。 全国模試なら毎回10位以内。なんやこの超人。いっつもケラケラふざけてバスケ命の癖に人一倍まじめで人一倍努力するやつ。 「…ってことはもう今みたいには会われへんのか。」 「え?何?」 ぼーっとして話が読めてない私は慌てて聞き返す。 夏姫のぼけぼけタイムまた始まったかーなんて呆れたように笑いながらトモは言った。 「上京するんやろ?」 あっ!と気付く。 トモの大学は東京にあるが2年間アメリカに留学だ。 急に胸がギュッと痛くなった。毎日同じ学校の制服を着て通ったのに。 「はよ探しぃや?」 含み笑いしているトモの声が聞こえた。 「…何を?」 「好きって気持ちをや…俺はもう彼氏の代わりはしぃひんで。」 トモのゆっくりした口調にずるい自分の心の中を見られた気がした。 あーでも変な男は好きになったらあかんよ!夏姫ほんま男知らんから怖いわーなんてぼやいてるトモが知らない人の様な感じがした。 好きって何なん? 恋って何?
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