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「これはちと、言いにくいんじゃが」
「あら、アーサーが言いにくいことなんてあるのかしら? デレク会長にだって、思うままなんでも言えるくせに」
「身内びいきと言われるかもしれんからの」
「身内!」アランの顔が輝く。「もしかして、朝陽が来てるの?」
「そうじゃ。ほら、あそこに」
アーサーが見た先では、朝陽がリフティングをしていた。頭、肩、膝と各所を使って器用にリフティングを続けている。
近くにいる参加者たちが、いつの間にかその軽やかなリフティングに見惚れたように周囲を取り囲んでいる。
「朝陽!」
アランがよく通る声で呼ぶと、朝陽は顔を上げて笑顔を見せる。
そして、リフティングを続けながら、アランとアーサーの前までやってきた。
「久しぶりね」
リフティングしていたボールを軽く蹴りあげて、両手で受け取った後、朝陽はアランを見る。
「お久しぶりです」
「今日ここにいるってことは、まさか朝陽もトライアウトを受けるってことなのかしら?」
「そうだよ。ハイ・スクールを卒業して半年経ったし。母さんもようやくプロになるのを許してくれたんだ。本当は来シーズンからって思ってたんだけど、今シーズンのプレストンは苦しんでるからさ」
「あら! 頼もしいわね」
「へへっ」
朝陽の返事に、アランは微笑む。
そして、もう五年以上も前になるある光景を思い出していた。
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