第1章

2/16
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
第一話 「おはようございます」 挨拶をしながら、営業部のドアを開ける。時間はいつもと同じ8時30分ピッタリ。 私は机の脇をすり抜けながら、窓際にある自分の席についた。 PCを起動させ、就業時間前に今日の仕事を確認し、段取りを決める。 新卒で入社して、営業事務に配属されて早数年。 毎日繰り返す朝の作業。完全なルーチンワーク。 でも不満があるわけではない。 (お給料もそこそこだし、人間関係も円満だし。それに……) メールボックスを開けると、ちょうど新しいメールが届いたところだった。 差出名は緋山晶。 PC越しに席を見ると、3列先の席からこちらを見つめる緋山さんの姿があった。 (緋山さん……もう来てたんだ) メールには「今夜空いてる?」の一文。 私は素早く「大丈夫です」と返事を送った。 PCを覗いた緋山さんは目配せをすると、何事もなかったように自分のPCに向き直った。 (相変わらずキザなんだから……) 内心そう思いながらも、口元が緩んできてしまう。 慌てて口元を隠し、私もPCに視線を戻した。 (そう、不満なんてあるわけない。だって彼氏が同じ部署にいるんだから)
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!