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第一話
「おはようございます」
挨拶をしながら、営業部のドアを開ける。時間はいつもと同じ8時30分ピッタリ。
私は机の脇をすり抜けながら、窓際にある自分の席についた。
PCを起動させ、就業時間前に今日の仕事を確認し、段取りを決める。
新卒で入社して、営業事務に配属されて早数年。
毎日繰り返す朝の作業。完全なルーチンワーク。
でも不満があるわけではない。
(お給料もそこそこだし、人間関係も円満だし。それに……)
メールボックスを開けると、ちょうど新しいメールが届いたところだった。
差出名は緋山晶。
PC越しに席を見ると、3列先の席からこちらを見つめる緋山さんの姿があった。
(緋山さん……もう来てたんだ)
メールには「今夜空いてる?」の一文。
私は素早く「大丈夫です」と返事を送った。
PCを覗いた緋山さんは目配せをすると、何事もなかったように自分のPCに向き直った。
(相変わらずキザなんだから……)
内心そう思いながらも、口元が緩んできてしまう。
慌てて口元を隠し、私もPCに視線を戻した。
(そう、不満なんてあるわけない。だって彼氏が同じ部署にいるんだから)
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