プロローグ:ノッキン ユア ドア

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 木々の隙間から洩れる星の光を片目で覗きながら、どんどん進む。  ちゃんとした道もあるが、面倒なので直線的に進む事に決め先を急いだ。 「それにしても、藪蚊多いな」  これなら虫よけスプレーでもかければ良かったと思いながら、気が付くと木々を抜けていた。  正面には海が広がる。左の方へ視線を移すと大きめの施設が佇んでいた。  見覚えのあるその施設は、何度かライブを行った小ホールのある会館だった。  八十席ほどの座席が有る小ホールは、音響こそ良いもののクラシック向きである作りの所為かあまり利用はしなかった。 「まぁ今となっては…………」  誰に言うでもなく独り言の様に言う。そう今となってはもうどうでも良い事だ。  何故なら俺は今日から音楽を卒業し、人より遅めの就職活動をしようと決めていたからだ。  音楽で食べていく程の覚悟も無いし、それにこのままズルズルと居るとメンバーにも悪い。  一応、この様な言い訳程度の理由は考えてきてはいた。  勉は会館の思い出はさて置き、海沿いに設置された柵にもたれる様にし夜空を仰いだ。
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