第二十二章 壊れてゆく君を抱いて

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 仕事へ向かう道のり。 今朝、雪へ弁解できなかった昨夜の自分の失態を思い出し羽琉は顔をしかめた。  戸惑っていた雪に強引に迫っておきながら、肝心な自分の性的欲求については少しも視野に入れていなかった。  あのときは、ただ雪の望みを叶えてやりたいと思う気持ちでいっぱいだった。 雪が口に出して言わないのなら、自分から考え雪が望むことをしようと思った。 それが裏目に出たのだ。 別に雪に対して欲情しなかった訳ではない。 今までも何度か雪に対して実際に行動に起こそうとしたことはあるのだから。 その度に、自分の身体は熱を帯びて熱くなった。 もっと雪に触れたいと感じた。 だが、昨夜はそんな自分の気持ちを置き去りにしたまま行動だけが先走っていた。 雪と肌を重ねなければと、使命感のようなものが自分を行動に移させた。 そんな自分の感情を無視した行為に、欲求を感じられる訳がない。  帰ったら、真っ先に雪と昨夜のことについて話し合おうと心に決めると仕事への道のりを急いだ。
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