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桐島の聞き方に一瞬、自分が勘違いしていたことに気付くと、雪は慌てて昨夜のことを思い出し気まずそうに顔を逸らした。
「あっ……その……前戯ってゆうか……」
恥ずかしそうに、そう口にした雪に桐島は躊躇う事なく質問を続ける。
「そのときに、”知り合いの女性”は彼が勃起していないことに気付いたってことかな?」
あまりにもストレートな桐島の質問に、雪は驚いた顔をすると再び顔を逸らし、ぽつりと呟いた。
「……まぁ」
気まずそうにしている雪とは打って変わって、桐島は笑みを浮かべると言葉を続ける。
「少し緊張していただけなのかもしれないよ。きっと、その女性とは初めてだったんじゃないのかな?」
能天気な声で、そう言った桐島に雪は眉を吊り上げた。
確かに、お互い初めてで、しかも同性という難問付きだ。
だからと言って、そんなことは初めから分かりきっていたことだった。
それを土壇場になって躊躇した羽琉の心が理解できない。
自分から行動に起こそうとしたくせに。
昨夜は落ち込む羽琉の姿に冷静に対処できた雪だったが、桐島に話しを聞いてもらっているうちに次第に腹が立ってきた。
「でもっ、自分から迫っておいてそんなのってっ……」
「…………」
突然、身を乗り出して声を上げた雪を、桐島は諭すように無言で微笑んでみせる。
そんな落ち着いた桐島の姿に、雪は眉間に皺を寄せると静かに口を開いた。
「……自分に魅力を感じられなかったとかじゃないのかなって」
実際口に出してみて、やはりそうなのではないかと思った。
羽琉と同じ、男である自分ではダメなのではないかと。
「彼にとって……自分じゃ、ダメなんじゃないかって」
肩を落とし哀しそうに、そう口にした雪に、桐島はふっと笑みを浮かべた。
「彼は嫌そうだったのかな?」
「えっ?」
面食らう雪に、桐島はそのときの羽琉の様子を伺うべく優しく問いかけた。
「どう思う? 彼は嫌々、触れてきた?」
桐島の問いに雪は”知り合いの女性”の話しの設定であることをすっかり忘れ、昨夜の羽琉の姿を思い浮かべていた。
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