第二十二章 壊れてゆく君を抱いて

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「……必死、だったと思う」 「…………」  ぽつりと言葉を口にした雪に桐島は黙ったまま耳を傾けた。 「必死で、気持ちに応えようとしくれてたんだと思う」 そう言った雪の顔が、さっきよりも穏やかな表情に変わったことに、桐島は安堵したように笑みを浮かべた。 「そう」  嬉しそうに微笑む桐島に、雪は思わず自分のことのように話してしまっていたことに気付くと慌てて口を開く。 「あっ……そう言ってたからっ。”知り合いの女性”が」 「そうなんだ」 「…………」 相変わらず笑顔のまま、相づちを打った桐島に、本当は自分と羽琉のことだと気付いているのではないかと疑惑の目を向けた。 だが桐島はそんな雪の様子に気付かない振りをすると本題へと話しを戻す。 「だったら、身体的な問題よりも心の問題の方が原因かもしれないね」 「心……?」 首を傾げた雪に、桐島は分かりやすく丁寧に説明を始める。 「そう。それも相手に性的欲求が起こらないというよりも、男性の場合、仕事のストレスとか心配事とか、他の人にとっては些細なことでも本人にとっては重要で男性機能が反応しない原因になったりすることもあるから」 「心配事……」  桐島が言った言葉に一つ思い当たることがあった。 羽琉が身体の不調をきたすほどの原因があるとすれば間違いなく自分のせいだと。 病のことを知ってから、どれほど羽琉を傷つけ心配させたか計り知れない。 それでも羽琉は全てを受け入れ、こんな自分と一生、傍にいてくれることを選んでくれた。 それが、どれだけ羽琉にとって勇気がいることだっただろう。 そんな羽琉の気持ちなど少しも理解しようとせず、一人で腹を立てていた自分が恥ずかしくなった。
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