第二十二章 壊れてゆく君を抱いて

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 雪が診察室から出て行くと桐島の顔から笑顔が消えた。 眉間に皺を寄せると慌てて机の引き出しの中を漁る。 以前、羽琉から受け取った名刺を見つけると携帯電話を手に取った。  今日、検査を行ってみて病が進行しているのは明らかだった。 これ以上、薬の副作用だと誤摩化すには限界がある。 それに病状が悪化したときに身体へもたらす症状がどんなものか雪に詳しく説明してある。 その内、身体の不調が薬ではないと気付いたときにはすでに遅い。 そうなる前に、なにか手を打たなければと、羽琉の電話番号を携帯電話に打ち込んだ。  桐島がダイヤルボタンに親指を添えると、突然、診察室のドアが開かれ焦った様子の看護師が一人飛び込んで来る。 「先生っ」 その様子に桐島は携帯電話を机の上に放ると慌てて椅子から立ち上がった。 「どうしたっ?」 「麻生さんが、廊下で倒れました」 「?!」 その言葉に桐島は慌てて診察室を飛び出して行った。
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