第二十二章 壊れてゆく君を抱いて

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 気分転換にと拓巳を病室に残し、中庭に羽琉を連れ出した慎司はタバコを口にくわえた羽琉に、先ほどから頭を過って離れない疑問を思い切ってぶつけてみる。 「なぁ、羽琉?」 「ん?」 口にタバコをくわえたまま返事を返してきた羽琉に、なるべく落ち着いた口調で言葉を続けた。 「お前、やけに冷静だな? もっと取り乱すかと思ったのに」  羽琉はタバコに火を点けると、直ぐさまタバコを口から離した。 「今更取り乱したところで、どうにかなるもんじゃねーし。それに、俺がそんなんじゃ雪が心配するだろ?」 そう答え再びタバコを口にした羽琉に、慎司は納得がいかない表情を浮かべる。 「そりゃ……そうかもしんねーけど……」  何か言いたそうな視線を向ける慎司に、羽琉は煙を口から吐き出しながら眉を潜めた。 「なんだよ?」  警戒するような視線を向け問いかけてきた羽琉に、慎司は自分が思っていることを口にしてみる。 「なんか……お前見てるとさ、こうなること知ってたみたいな感じがするから」 その言葉に羽琉は目を伏せると言葉を濁すように再びタバコを口元に持って行った。 「……そんな訳ないだろ。俺は……医者じゃねーんだから」  タバコを指で挟んだまま、せわしなく煙を吐き出す羽琉に慎司は怪訝な表情を浮かべるも、これ以上なにも追求する言葉が見つからず諦めて目を伏せた。 「……そうだよな」  口ではそう言っていても未だ納得のいっていない様子の慎司を、羽琉は横目で見ると眉間に皺を寄せた。
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