第二十二章 壊れてゆく君を抱いて

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 雪は一人、自分の部屋で羽琉がデートの時に撮影した写真を眺めていた。  街や風景の写真も混じってはいるが大半は自分を写した写真ばかりだ。 こんなに自分ばかり撮って羽琉はよく飽きないなと思いながらも、写真の中で幸せそうに微笑んでいる自分の姿は、そんなに嫌いではないなと感じるようになった。 それはきっと羽琉が撮った写真だからだろう。 羽琉が撮る写真は暖かくて好きだ。 その中に自分が写っていると、まるで自分までその暖かい温もりに包まれているような幸せな気持ちになることが出来る。 羽琉の撮った写真に収まることで、羽琉の腕に包まれているようなそんな錯覚に落ちいった。  テーブルの上に広げていた写真を一つにまとめると、それを仕舞おうと机の引き出しを開ける。 その中に以前、店を出るときに拓巳宛に残したA3サイズの封筒を見つけ、思い出したようにそれを手に取った。 「…………」 暫く考え込むように封筒を見詰めると意を決したように雪は杖をつき立ち上がった。
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