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「…どうしたの?サユキ」
教室まで戻ってくると、引っ張られていた腕が解放される。
振り返ったサユキに先ほどまでの冷たい表情はなかった。
…見間違え?…だったのかな。
「ご、ごめんなさい。いきなり名前呼ばれたから驚いちゃって」
誰と間違えたのかな?と苦笑いのサユキ。
たしかに人違いはよくあるけど、名前まで被ることなんてある…?
疑っているわけじゃないけど、あのときの如月悠斗の顔が頭から離れない。
分からない、どうしてあんな顔をしていたのか。
私にはあの表情を説明できない。
苦しみでも悲しみでもなくて、もっと別の何か…
「エイルちゃん?携帯が鳴ってますよ?」
考え事に夢中でメールの着信音にすら気づいていなかった。
自分の席についてメールを確認すると送信者は飛呂。
『お前さ、相変わらず彼氏いねーの?』
…どんだけ暇なんだ、ほっておいてくれ。
『で、用件は?』
メールを送り返すと一分もかからず返信がくる。
スタンバイしてたのか、本当に暇なのか。
『秋祭り、一緒にいかねぇ?』
…は?
彼女はどうしたと聞けばいると答える。
メールではなかなか話が進まないので電話をかけることにした。
つまりこういうことらしい。
彼女が大勢の方が楽しいからと南波遥を誘おうとしているらしい。
南波遥を誘えば如月悠斗も来るだろうし、飛呂には少しキツイかもしれない。
好きだった女が他の男といるところをみても嬉しくはないだろうし。
だから、飛呂が男友達を一人呼ぶから私に来てほしいと?
「普通に嫌なんだけど」
「とか言いながらも来てくれる錦は良い奴だよな」
「分かった、分かったってば」
仕方なく了解して電話を切る。
詳しい予定は後日連絡するとのこと。
あまり人ごみとか得意じゃないんだけどな。
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