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秋祭り当日、待ち合わせの場所に着いたのは十五分前。
少し早く来すぎてしまったかもしれない。
まぁ遅刻するよりいいかとベンチに腰を下ろす。
この地域は夏祭りをせず、秋祭りに全力をそそぐ。
理由は簡単、夏は暑いからしんどいらしい。
だから、花火も屋台も全部この地域では秋の風物詩だ。
「錦エイル…だよな?」
「そうだけど…、三島くん?」
どうやら飛呂達よりも彼が誘ったという男子が先に到着したらしい。
スキンヘッドのいかつい男が隣に座る。
見た目で人を判断するつもりはないけど、もっと普通の友達はいなかったのか。
明らかに避けられているのが分かる、本人は気にしていないようだけど。
「大変だな、アンタも」
「お互い様じゃない?」
新しい高校の友達だろうか。
その様子だともうかなり振り回されているんじゃないかな。
「根は良い奴だからな、頼まれると断れねぇんだよ」
「あー、分かるかも」
意外と話は弾み、約束の時間になるが飛呂たちの姿は見えない。
飛呂はそこまで時間にルーズなわけではなかったから、彼女の方がおしゃれに時間がかかっているのだろう。
私とスキンヘッド…じゃなくて三島くんの携帯が同時に震える。
飛呂からのメールで先に行っておいてくれとのこと。
「私、祭りとか興味ないんだけどな」
「ま、適当になんか食ってるか」
失礼だが見た目によらず良い人らしい。
飛呂の友達という時点でそれほど心配はしていなかったのだけど。
せっかくの祭りだからと綿あめをおごってくれた。
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