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「私の奢りです。どうぞ召し上がれ」
店の裏で簡単な椅子を出して貰い、そこに腰かける。
どうやらおじいさんの手伝いをしているらしい。
「悪いな、オレの分まで」
「いえ、おじいちゃんのたこやき美味しいんですよ」
サユキの言うとおり、お世辞とかじゃなくて本当に美味しかった。
おじいさんがこだわりぬいた食材で作っているのだとか。
しかし、無愛想で人が寄り付きにくいためサユキがサポートをしているようだ。
「彼が最近よくメールしてた人ですか?」
「ううん、その友達の三島くん」
ペコリと頭を下げて自己紹介をするサユキ。
飛呂から会場についたとの連絡も入り、しばらく三人で話していた。
たこやきを食べ終わり、そろそろ飛呂たちを探しに行こうと立ちあがる。
サユキもお客さんが来たらしく、お店に戻ろうとしていた。
「…」
しかし、その足はお店に向かおうとしない。
立ち止まったサユキの視線の先には如月悠斗と南波遥の姿。
やっぱりあの二人には何かあったのかもしれない。
「え、えっと…!いらっしゃいませ。いくつですか?」
スッとサユキを三島くんの背中に隠して注文を受ける。
おじいさんは特に理由も聞かず「悪いな」と呟いた。
「一つお願いします」
如月悠斗から小銭を受け取り、たこ焼きを手渡す。
なんとかやりすごせそうだと安心したときだった。
「なに店番してんの?錦」
彼女を連れた飛呂が私に気づいて声をかける。
そして、飛呂の声に過剰に反応して見せたのは南波遥。
「おいっ!」
ほんのわずかな沈黙を破ったのは三島くんの慌てた声。
何かあったのかと振り返れば人ごみに消えて行くサユキの姿。
彼女に気付いた如月悠斗が追いかけようとして足を止める。
とても処理できない状況、何もかもがかみ合わない。
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