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「この薬は安定剤、体調が悪いわけではないの」
「そう…なんですか。た、頼ってくれていいですからね!私たちダブ友ですから」
すんなりと受け入れてくれるんだ、こんな私を。
もしかしたら私たちは似ているのかもしれない。
もちろん性格とかじゃなくて、もっと根本的な何かが。
「空いてる席ないねー?」
気の抜けるような緩い声が近づいてくる。
会話からして席を探しているらしい。
もう食べ終わっていた私達は顔を見合わせてそろそろ出ようかと片付け始める。
「私たちもう行くんでこの席どうぞ」
声をかけてからハッとする。
さっきの声の主を含む三人組は一方的にだが良く知る人物だった。
ふと南波遥と視線が絡み、ぎこちなくもさりげなく目をそらした。
別に気まずいわけではないけど、昨日のヒロとの会話を思うと直視できない。
南波遥の隣にはいつものように如月悠斗もいる。
さきほどの緩い声の主はリコと呼ばれる南波遥の親友だろう。
南波遥の影響か、恐ろしいほどに濃かったメイクはもうしていない。
「…サユキ?」
早く立ち去ろうとしたとき、つぶやくような如月悠斗の声。
サユキの名前を知っている?
知り合いなのか尋ねようとするが、冷たい表情のサユキに言葉を詰まらせる。
「どちら様ですか?」
睨むように如月悠斗を見上げると、サユキは戸惑う私を引っ張って食堂を出た。
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