真夏の台風

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ここなら、待ってても、変に思われないよね…。 彩華は、制服のまま、フルートケースを大事そうに抱えて、あるビルの前に立っていた。 そこは、1階が、ギャラリーと楽器店、2階には、音楽教室が、入っていたからだ。 3階から上は、それらを経営している楽器メーカーのオフィス。 勤務時間が終わったのか、スーツや大人っぽいカジュアルに身を包んだ人達が、吐き出されてくる…誰も、彩華には、気を止めない。 そんな中、同僚と話をしながら出てきた奏多を、彩華は、見つけた。 一瞬、視線が合った。 「奏多先ぱ~い♪」 彩華!!…なんで、ここにいるんだ!? 「おい、小松崎。こっち向いて、手を振ってんぞ。知り合いか?」 「可愛いなぁ、あの制服、×××学院だろ…。」 「ああ…俺の後輩なんだ。悪いけど、また、来週な。」 駆け寄ってくる奏多を、ニコニコしながら、待っていた。 「彩華、部活の帰りか?家とは、反対方向だろ?なんで、いる?」 「答える前に、今日は、なんの日か、知ってる? 奏多先輩。」 「なんだ?…今日が、誕生日じゃないよな?」 「ブーゥ!!…ハズレです。はずした人は、罰ゲーム! 私に、付き合ってもらうからね。」 「えっ…今からか?」 「そうだよ…。約束、まだ叶えてくれてないんだから、付き合ってね!」 「で、どこいくの?」 「家だよ。…家のベランダから、花火大会の花火が、よく見えるんだ。 小松崎奏多さんを、夕食に、ご招待です♪ 早くしないと、バーベキュー、みんなに食べられちゃうよ。急ごう!!」 私は、奏多先輩の腕を引っ張って、駅へ向かった…。
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