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花火が始まる頃には、たっぷりあった食材は、あらかた片付いていた。
「ただいま。はい、デザート代わりのアイスよ。好きなの選びなさい。」
いつの間にか、帰ってきた母さんが、みんなに、大量のアイスを見せていた。
まだまだ、暑いし、汗だくになっていたから、みんなは、もう冷たいアイスに、意識が集中していた。
「俺にもくれよ、ナッキー。」
「あいよ!…ミッキーの好きなの…っと。
あった!…ほい!ソーダ味!」
「サンキュー♪」
夏樹が投げてよこしたアイスバーの袋を開けて、くわえた瞬間、たまたま、母さんが、前を通った…。
ふわっと鼻腔をくすぐったのは、家で使ってるのとは明らかに違うシャンプーの香り…。
「…ん?」
たいしたことじゃないけど、少し考えて気付いた…。
「マジかよ…。」
夕方、俺が帰ってから、母さんは、家に、2つあるバスルームのどっちにも行ってない…。
美容室に行った訳でもないのに、外で、髪だけ洗うなんて、普通ありえないしな…。
つまりだ…髪を洗える場所があるところに、行ったってことだよな。父さんと…。
普通に考えたら、銭湯だけど…それなら、お風呂用に色々持っていくよな…。手ぶらだったし…。
結局行き着く結論、…外で、いちゃついてきたわけだ…誰にも、邪魔されない所で…となると、行く所なんて、決まってる…。
リアルな現実は、妙に気恥ずかしくて、照れる…自分だって、似たようなものなのに…。
「どうかしたのか、光輝?」
「…今、声掛けんのアウト。」
「はぁ?」
…鈍感だよ、父さん。
「母さんと二人で、どこ行ってきたのさ…母さんのシャンプーの匂いが違うよ。」
「…わかってんなら、聞くな。」
表情ひとつ変えないで、そう切り返すのかよ…。
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