380人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、パパさんの用事なんだったのよ、彩華?」
「うん…パパとフルートのコンクールを、見てきたの。
奏多がね、コンクールに出てたんだ。」
「小松崎先輩、出たの!?本当に?」
「そうなのよ、有紗。酷いんだよ、奏多…私に、内緒でエントリーしてたんだから。」
「でも、その割には、嬉しそうに話すじゃない。」
「だって、凄く良い演奏だったのよ!!鳥肌ものの凄いやつ!!」
「…鳥肌って、そんなに凄かったの?」
「何度か、奏多のフルート聞いてるけど、あんなの初めてだった。
奏多が、全身全霊掛けて、演奏してるって、伝わってきた。
奏多、事故で、右手傷付いて、もう二度とフルートは、吹けないかもしれないって、お医者さんに、言われてたんだよ。
絶望の淵から、血の滲むような思いをしながら、3年間、頑張ってきたんだもん。
あれは、自分は、ここにいるって訴えてる、奏多の叫びだよ…。だから、泣いちゃった、私。」
「奏多さん、優勝したの?」
「蘭、音楽のコンクールに“優勝”って言葉はないよ。代わりに“金賞”ってのがある。」
「そうなんだ。…勉強不足だね、私。」
「そんなの普通は、知らないよ。気にしない、蘭。」
「うん。」
「ところで、彩華。小松崎先輩は、勿論、金賞取ったんだよね?」
「うん、金賞だったから、全国大会に出られるって。」
「よかったね、彩華。」
「うん♪」
飛び切りの笑顔で、私は、二人に答えた。
最初のコメントを投稿しよう!