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「速水のそういうとこ、俺は、いつも感心してんだぜ。
お前はさ、みんなが見てないところまで、周りをちゃんとみて、過不足なく手配する。なかなか出来ることじゃないよ。
だから、いまだに、お前を慕ってる同僚や後輩達が一杯いる。
それに、お前がさ、山河に残ってたら、絶対、俺なんかより、早くに、役付きになって、敏腕振るってたはずだよ。
なあ、今更な話だけどさ、山河に戻りたいとか、お前、思ったことないのか?」
「ない。」
「即答だな。」
「なんで、戻らなきゃならないんだ、谷口?
俺は、そこにいたら、思うように動けなくなる。それが、わかっていたから、飛び出したんだ。
この20数年、千秋のためだけに、俺は、生きてきたんだ。これからも、死ぬまで、そのスタンスを、変えるつもりは、これっぽっちもない。
どんなに、良い条件並べられたって、組織の中に入っちまったら、見えない柵に、いつの間にか、がんじがらめになっちまうのは、目に見えてる。
俺の最優先は、誰がなんと言おうと、千秋だからな。それを、譲る気は、一切ない。」
「本当、お前、千秋ちゃん命だな。羨ましいぐらいだよ。」
「俺の唯一のポリシーだ。羨ましいもなにもない。」
「はははは、そうでなくちゃ、速水じゃないな。」
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