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ベッドサイドの一輪挿しの中で、薔薇の花は、まだ、鮮やかな色を保っていた。
部屋の扉をノックする音がして、開いた向こうから、聞き覚えのある女性の声がした。
「お邪魔しま~す。」
「香織さんなの…?」
「そう。」
「上にいるから、上がって来て。」
階段を、軽やかに上がってきたのは、義姉の香織だった。
「起きなくていいからね、千秋ちゃん。」
「もしかして、彰が、連絡したんですか?」
「違うわよ。たまたま。
昨日まで、ジェイクとミシェルが来てたのよ。
お土産のお裾分けと、ジェイクに頼まれたものを、光輝に、持ってきたの。
なんか、光輝が、日本で手に入らない専門書を探していたみたいでね。ジェイクに、見つけたら、送って欲しいって頼んでいたみたいよ。
たまたま、仕事の都合で、日本に来ることになったから、送らずに持ってきてくれたの。」
「手間掛けちゃったのね。ありがとう。」
「これぐらい、どうってことないわよ。
それより、体、大丈夫なの?」
「軽い肺炎だって…熱下がらなかったら、入院させられちゃうところだったわ。」
「気をつけなくちゃ。彰君に、心配かけちゃダメよ。」
「わかってるんだけどね…。」
「わかってるなら、尚更よ。」
お小言でも、温かいのは、愛されてるからなんだと、千秋は、思った。
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