薔薇の約束・Ⅱ

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「まだ、光輝が生まれてすぐの頃よ。彰のお祖父様が亡くなったの。 お祖父様がいない、このお屋敷には、全然、意味がなかったし、ここを引き継いだ鈴音さんも、しばらくして、隆司叔父様に、譲ってしまったわ。 だから、私と彰ね、二度とここへは、来ないつもりで、お別れしに来たの。 もう、彰の思い出の場所に、来ることはないんだって、思うだけで、悲しかった。 ここには、彰の好きな場所が、沢山あったのを、私、知ってる。 その中でも、お母様のバラ園を、彰が、一番大切に思っていたのを、私、知ってるの。 だからこそ、薔薇が、咲き誇る花壇を、私は、一度でいいから、見たかった。 でも、無理なんだって思ったら、泣きそうになって…。 そんな私を見て、彰が、言い出したの…いつか、お母様のバラ園より、もっとすごいの作ろうって。 冬だったから、手始めは、家のベランダで、ビオラの寄せ植を作ったのよ。勿論、彰の主導でね。」 「…ビオラの寄せ植…やっぱり、彰君のイメージじゃないわ。」 「きっと、他の人に話しても、同じ様なこと、言われると思うわ。でも、本当のことだもの。」
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