薔薇の約束・Ⅱ

10/21
前へ
/806ページ
次へ
千秋は、体を起こして、ベッドの上に座り直した。 「大丈夫、千秋ちゃん?」 「平気…だって、香織さんと話をするの楽しいもの。 ごめんなさい、そこのお水もらえる?」 千秋は、水差しの水を、香織に入れてもらって、一口飲んだ後、続きを話始めた。 「彰ね、お屋敷の改築しながら、私が、消してほしくないって言った、彰の思い出の場所、少しずつ直してくれてたの。 でも、ただ直すだけじゃ、前と変わらない。新しく生まれ変わって、新しい思い出を作っていかなくちゃならないんだから、そういう手の入れ方するからって…。」 一気に、そこまで話すと、ふぅ…と、息を吐いた。 「お母様のバラ園もそうなの。一度、全部の薔薇が、枯れてしまっているから、彰が、庭師さんに、教えてもらいながら、一株ずつ、植えているのよ。 ライブラリーの横にある花壇は、まだ、苗を、植えたばかりだから、今年、咲くとしたら、なんとか、秋咲きが、間に合うかなっていうぐらいらしいわ。 温室はね、露地植が出来ない品種とか、鉢植えを、元々、置いていたらしいの。 この薔薇はね、彰が、温室に置いた最初の一鉢に、咲いたんだって。 他の株にも、蕾がついているから、具合もうちょっとよくなったら、温室へ連れて行ってもらうのよ。楽しみなんだ。」 千秋の笑い顔に、香織は、安堵する。 「元気出てきてるみたいだから、安心したわ。」
/806ページ

最初のコメントを投稿しよう!

379人が本棚に入れています
本棚に追加