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朝食の後、片付けを陽菜に任せて、彰は、約束の薔薇を千秋に見せるために、温室へ続く通路を歩いていた。
通路の脇は、露地植えにした薔薇の花壇だ。
「この辺りは、しっかり、根が着いたみたいだからね、秋から冬に掛けて、咲くと思うよ。」
ライブラリーの近くは、来年の今頃だな。」
「楽しみは、多いに 越したことはないじゃない。
彰の薔薇が、沢山、綺麗に咲くといいな。」
楽しそうに、千秋が言うのを見て、彰は、それだけで満足していた。
「さて、温室だけど、入る前に、諸注意。」
「なにそれ?私は、小学生かなにか?」
「そういう訳じゃないから、拗ねんなよ。
薔薇の管理の都合でさ、中を幾つかの部屋に、区切ってる。
部屋毎に湿度と温度を調整してるから、気を付けて欲しいだけなんだ。」
「そういうことならいいわ。」
ツンとしたって、俺とは違って、千秋は可愛い。でも、今は、そういうこと、言う時じゃない。
さて、見せなくちゃな、飛び切り、綺麗な薔薇を千秋にさ。
「一番奥の部屋だから。」
俺は、千秋の手を、ぎゅっと握って、歩き出す。
「結構、中広いんだね。」
「奥行きがあるからね。」
「薔薇、綺麗だね。」
「一生懸命、世話したからな。気に入ってくれたなら、嬉しいがな。」
「気に入るに決まってるじゃない。私が、望んだものなんだから。」
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