薔薇の約束・Ⅱ

18/21

379人が本棚に入れています
本棚に追加
/806ページ
朝食の後、片付けを陽菜に任せて、彰は、約束の薔薇を千秋に見せるために、温室へ続く通路を歩いていた。 通路の脇は、露地植えにした薔薇の花壇だ。 「この辺りは、しっかり、根が着いたみたいだからね、秋から冬に掛けて、咲くと思うよ。」 ライブラリーの近くは、来年の今頃だな。」 「楽しみは、多いに 越したことはないじゃない。 彰の薔薇が、沢山、綺麗に咲くといいな。」 楽しそうに、千秋が言うのを見て、彰は、それだけで満足していた。 「さて、温室だけど、入る前に、諸注意。」 「なにそれ?私は、小学生かなにか?」 「そういう訳じゃないから、拗ねんなよ。 薔薇の管理の都合でさ、中を幾つかの部屋に、区切ってる。 部屋毎に湿度と温度を調整してるから、気を付けて欲しいだけなんだ。」 「そういうことならいいわ。」 ツンとしたって、俺とは違って、千秋は可愛い。でも、今は、そういうこと、言う時じゃない。 さて、見せなくちゃな、飛び切り、綺麗な薔薇を千秋にさ。 「一番奥の部屋だから。」 俺は、千秋の手を、ぎゅっと握って、歩き出す。 「結構、中広いんだね。」 「奥行きがあるからね。」 「薔薇、綺麗だね。」 「一生懸命、世話したからな。気に入ってくれたなら、嬉しいがな。」 「気に入るに決まってるじゃない。私が、望んだものなんだから。」
/806ページ

最初のコメントを投稿しよう!

379人が本棚に入れています
本棚に追加