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そこにあった薔薇は、見たことのない、紫というか、濃い藤色というか、不思議な色。
「“青い薔薇”って、聞いたことない?」
「聞いたことある気はするけど…たぶん見たことないわ。これが“青い薔薇”なの?」
「そうだよ。青い色を出す遺伝子を持っている薔薇って、少ないし、交配が難しいんだって。
掛け合わせて、完全な青を作ろうと、研究者は、頑張っているらしいけど、まだ、開発されてないんだそうだ。
今は、この色が、精一杯らしい。
これは、最近、切り花で出回ってきてるみたいだけどね。
まあ、鉢植えは、そうそう、手に入らないと思うよ。」
「私のために、取り寄せてくれたの?」
「それ以外の理由なんてないだろう。」
「すごく、心に残るプレゼントだよ。彰、本当にありがとう。」
「俺はね、君が、喜んでくれて、今までみたいに、元気に笑ってくれたら、それで十分なんだ。
その顔は、満足してくれた顔だね。」
「うん、満足よ。ねぇ、この薔薇、名前とかあるの?」
「個別の名前はないよ。品種名は《アプローズ》っていうんだ。
座ってゆっくり見ろよ。そこ、特等席だからな。」
ちょうど、薔薇の鉢の真ん前に、木のベンチが、置いてあった。
千秋は、いつまでも、飽きずに、ずっと青い薔薇の花を眺め続けていた。
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