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「なぁ、千秋…。」
そっと、後ろから、肩越しに回された彰の手は、千秋の胸の辺りで、組まれた。
「なぁに?」
「俺、お前のお願い、ちゃんと、叶えられてるか?」
「うん、ちゃんと叶えてくれてるよ。私の予想以上に、素敵にね…。」
「なら、よかった。」
「彰にしては、気弱な発言ね。どうしたの…。」
千秋は、自分の手で、彰の組んだ手を、優しく包み込みながら、聞いた。
「俺、素直じゃないからな…答え見つけるまでに、すごく回り道した。」
「うん。」
「千秋を、こうやって、あの時、捕まえていたら、もっともっと、早くに、答えにたどり着けていたかもな。」
「それはね、私も一緒だよ、彰。
彰が、せっかく掴んでくれた手を、握り返せなかった私も、悪いの…。
でもね、もう一度、あなたに会えて、あなたが、私を選んでくれた。
それだけで、もう幸せだったのよ。
あなたの奥さんになって、あなたの子供が欲しいって、心の底から思ってた…だけど、私には、そんな資格ないって思う私がいたのも、本当よ。
そんな私に、幸せになっていいんだと、教えてくれたのも、彰、あなただったわ。
一人だったら、乗り越えられなかったこと、一杯あったじゃない。でも、いつだって、側にいてくれたから、私、頑張れたんだよ…。
彰じゃないと、私の思いは、形に出来ないの。
彰じゃないと、私の夢は、叶わない。
彰じゃないと、私は、幸せになれないのよ。」
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