報告書3:冬と春の境界線

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水上を見やれば、まるで少年のように破願して腹を抱えている。 「水上、笑いすぎ」 「悪い。そんな風に周りが見ていたって思ったら凄い可笑しくて。 どうする?噂が消えるまで俺達距離置くか?」 「えぇーわざわざする事ないよ。そんなくだらないネタのために」 ―――そうだ、これでいい。きっと最善な選択だ。 他人からの噂に混ぜ込んで、馬鹿な話の一つとして消化してしまえばいい。 全てを明かす必要は無い。 今の関係の持続が何よりの優先事項で、こちらの本心を吐露したところで余計な迷いを生むだけ。 最悪は、関係の崩壊と身の破滅が待ち構えているのだから。 「『その子』から連絡あるといいね」 帰り際、勝手口を跨ぐ水上に投げ掛ける。 「ああ。津田も、これから見つかるといいな」 津田はにっこりと目を細め唇を横に引いて、去り行く背中を眺め見送った。 「……は…」 独りきりになり、静まり返った厨房に渇いた声が落ちた。 ―――大丈夫。どうってことない。 ほら。僕はこんなにも、きちんと笑っていられる。 だから、大丈夫だ。 季節は移り行き、振り返れば既にはっきりと境界を越えていた。 冬の気配は消えた。 春は確実に訪れた。 そして、親愛なる友のもとにも。 厳しい冬を耐え、歓びの春を迎えた彼に、心からの賛辞とエールを送ろう。 これからも傍らで、春の陽射しのように暖かく見守り続けよう。 それが自分が果たすべき使命の、“償い”の形なのだから。 fin.
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