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「それから、ちょっと早いですけど…これ、良かったら」
瀬名の手元のショルダーバッグから遠慮がちに取り出されたのは、細長くラッピングされた箱。
黒い包装の上には水色のリボンがかけられている。
「誕生日プレゼントですっ。どうぞっ」
まるで一世一代の『お願いします』の告白が如く、頭を下げて箱を突き出す。
大きな緊張と覚悟を見せる姿が初々しい。
「ありがとう。開けてもいい?」
「は、はい。お気に召したらいいんですけど。
男の人のプレゼント買うのって私初めてで…」
受け取った箱のリボンを水上が外すと、現れたのはメタリックブルーの筆記具。
クリップには艶やかな銀の装飾が施され、細身の軸はひねるとペン先が顔を出す仕様だ。
「最初は腕時計にしようと思ったんですけど、大人の男性の方がする時計って、デザインとか色々と範囲が広くてよく分からなくて。
財布とかネクタイとかも、鷹洋さんの趣味があるしと思って…」
思い付く限りの全ての案を出し尽くし、悩みに悩んだ末辿り着いたのがこのボールペンだったという。
文具店に勤める実妹、沙那からアドバイスを受けて選んだのはウォーターマン製。
シンプルな細いフォルムは、水上の醸し出す雰囲気を彷彿とさせる部分がある。
「使いやすそうだし、いい色だね。青は凄く好きな色なんだ」
「良かった!
鷹洋さん、いつも青系のネクタイしてるから好きなんじゃないかなって。私服も爽やかな感じの色が多いなあって思ってました」
「意外にチェックしてるんだ、俺の事」
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