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正月休み明けの事務所は忙しない。
連休中にメールで舞い込んだ更新依頼をこなすのは勿論、前年より承けていながら翌年に持ち越された、新規制作の依頼も待ち構えていたからだ。
各々が残業で業務をこなして、二時間前には瀬名、あやの、涼が退社。
現在、事務所に残されたのは二名の年長組である。
黙々とキーボードを叩いていた星也がふと席を離れ、ファックス台の前に立った。
用があったのは背面の壁に掛けられたカレンダーらしく、とある日付の欄に『長浜:休暇』の文言がボールペンで書き込まれる。
「へぇ、珍しい。星也がカレンダー活用するなんて。でも何でわざわざ休みって書くの?」
星也が記入した欄は一週間後、日にちが朱色で示された一月の第二月曜日で―――そう、祝日のため会社は元より休業日であるのだが。
あっけらかんと尋ねた保志沢に、星也はジト目を送って答えた。
「お前に訳分からん用事で呼び出されないように念押し。口だけじゃお前、人の予定なんてすぐに忘れるだろ。いっつもしょうもない用事で俺の休みに水を差しやがって」
「予定…?成人の日……あぁ!」
一般家庭では就寝している人もいるだろうという時刻、静まり返った夜の事務所で保志沢が叫ぶ。
「えっ、星也ってまだハタチだったっけ?」
「お前なぁ…」
「あはは、冗談だって。沙那ちゃんの成人式でしょ。星也が送り迎えしてあげるんだ?」
リクライニングタイプのチェアーに仰け反りながらの保志沢が笑顔で投げると、星也の顔が曇りに転じた。
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