報告書1:ハレの日はあでやかに

3/60
前へ
/251ページ
次へ
「そうと決まった訳じゃない。大体、振袖でバイクはどうやっても無理だろ」 「は、確かにそうだね。車貸そうか?」 いや、いい、と星也は即答して自分のデスク前へ腰を下ろした。 「ところでさ、最近ヤってる?」 保志沢の突飛な質問に、答えは端的に溜息と共に返される。 「…してねぇな」 「星也もか。お互い辛い身だねぇ。俺、多分最後にしたのクリスマスなんだよね。 正月はあやの実家に帰ってたし、俺は風邪引いて寝てたし、明けたらこの通り仕事が山積みで残業だし。 昼間あやのがいた時はマジでヤバくてさ、休憩室で擦れ違った時は抑えるの必死だったよ」 「末期だな。けど事務所ではするなよ」 「んなコト分かってるって。あーでも、手が届く位置に姿が見えるだけに余計辛い…!」 顔を突っ伏しての保志沢の赤裸々な愚痴は、独り言のように机に吐き続けられる。 片や腕組みをする星也は、相変わらずのポーカーフェースだ。 「社内恋愛も案外楽じゃないね。 あれ、でも星也、年末年始は沙那ちゃんと一緒に過ごさなかったの?」 「過ごしたが」 「ケンカでもした?」 「いや、特別大きなのは無い」 「じゃあ早くもレス?」 怒涛の質問攻めに、星也の眉根がようやく寄せられる。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1792人が本棚に入れています
本棚に追加