報告書1:ハレの日はあでやかに

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「レス云々以前の問題だ」 「……え、まさか星也…俺達とのすぐ後に付き合い始めてるんだから、もう半年経つ頃だよね?」 星也の視線がふいと逸らされる。 数秒の沈黙が降り落ち、保志沢はわざとらしく両手で顔面を覆って嘆いた。 「…半年間も苦行を強いられてる29歳成年男子がここに…!」 「おい!俺をかわいそうな奴扱いするな!!」 ―――あぁクソ、やっぱりコイツに話すんじゃなかった。 好奇と憐れみの入り混じった眼差しを送る保志沢を忌々しく思いながら、事実を打ち明けた自分自身への嫌悪を抱く。 その後悔の念は同時に、沙那との交際を明かした四ヶ月前の秋にも遡った。 四ヶ月前、保志沢に白状する羽目になったのは涼の発言が発端である。 毎月恒例の飲み会の席で、どういう経緯か事務所メンバーの誕生日についての話題になり。 自分に振られたものだから『先週が誕生日だった』と答えると、 酒を煽って少々強気な涼からの『例のサナちゃんからはプレゼント貰いました?』発言。 そこでスルーかごまかすかすれば良かったのだが、嘘をつけない性分が災いして『ボディバッグを貰った』と馬鹿正直に答えてしまった。 しかもそのボディバッグ。 前の週に『新調したんだね』とバッグを変えた事に気付いた保志沢から声を掛けられており、以降も毎日それを背負って出勤していた。 結果、彼女でも何でもない人物からのプレゼントを、後生大事に毎日欠かさず身に着けはしないだろと保志沢に指摘され。 再び訪れたごまかすチャンスも全く活かせず、飲み会の場は暴露ステージへと化してしまった次第だ。
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