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鯉口を切り、指先一つで刀剣を抜き放つシャルロッテは両手を交差するように剣を振るう。
先程と同じように捉えられる切っ先はファティの指の間に挟まっている。
「あら?」
ファティは力を弱めたつもりは無かったが刀剣がすり抜けるように指の間から抜け出し、ファティの指を落とそうと刃が煌き迫っていた。
金属同士がぶつかった音が響き火花が散る。
「硬い」
手が痺れるほどの硬さは今までの手応えとは違う感触、シャルロッテはファティを睨みながら両手に持つ刀剣を見つめるが傷は見当たらない。
ファティもどうやら傷は無いようで切り裂かれたはずの部分を擦っている程度だ。
「痛いね、ちょっと油断してた」
反省、というようにシャルロッテを改めて見つめ直すと周囲が熱を持ち始める。
次第にファティの周囲が揺らぎ、煙がファティから沸騰するように出て行く。
そして自然発火、炎を纏い地面を焦がしていくファティの熱は周囲の森に燃えて広がる。
「熱い、な」
軍帽子を深く被り直し、肉食植物達が発火していくのを眺めながらシャルロッテは笑う。
周囲から伸びてくる植物を駆除してくれる優しさに。
もちろん相手にはそんなつもりが無いのを知っているが。
「掴むぞ」
勝利を、栄光を、何よりも自由を。
腰を落とし刀剣を構え、燃え続ける敵を見据えるシャルロッテは声を出す。
自らも彼女達の一員となる為に。
女性でありながら輝き放つ色を持つ人々と肩を並べ、女の戦場へと立つのだ。
「私だって、女だ」
好きな人には振り向いて貰いたい。例え主従の関係であろうとも、敵わぬ恋慕であろうとも。
皆の気持ちが心地良く、熱さが丁度良い。こんな炎よりも燃え上がってしまっているのだから。
「消化なんぞしてくれるな」
見えなくなった白い背中、思い続けるのは慣れている。
私達の恋を邪魔するなよ。
シャルロッテは舞う。
一本の剣を前方へ放り出し、もう一本を片手にファティへと迫るのだ。
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