3.左内よしか

2/3
前へ
/12ページ
次へ
よしかは情報収集に躍起になっていた。この会社…。おかしい。この情報社会でこんなに捜しても何一つ情報を得られないとは。よしかのキーボードを叩く音が、次第に早さを増していく。 「株式会社フリーダム…。代表者名どころか会社名すらヒットしないとは…。一体何なんだこの会社…。」 昨日までで3日連続。今日届けば4日連続。今日という今日は正体を暴いてやる。この3日間、届く時刻は必ず23時前後。そして届く数分前には必ず非通知の着信がある。初日は電話を取り逃した。そしてその直後ドアポストがカタンと音を立て、こいつが投げ込まれた。 2日目に応答すると無機質な女性の機械音で 『株式会社フリーダム製薬よりお荷物が届いております。』 このメッセージが数秒間繰り返され切れる。その直後マンションのドアポストがカタンと音を立て、見ればこいつが入っている。 3日目も2日目と全く同じ。メッセージ後の投げ入れ。 今日もきっと来るはず。今、時刻は22時50分。おそらく今から1時間以内にまた携帯が鳴るはず。そうしたらすかさず外に出て犯人を捕まえ尋問する。どこの誰で、目的はなんなのか。 が、よしかの意気込みとは裏腹に、無情にも静かに時間は経過していく。 現在23時55分。 「何だってんだ。…来ないのかよ。」 よしかはやや拍子抜けした。と共に苛立ちが募った。 昨日までで合計3袋届いた。各袋の中に小瓶が一つずつと、その中に錠剤が一粒ずつ。色はどれも皆同じ。中身には全く興味が無かったので小瓶の蓋を開けもしていない。そんな事よりも、何故オートロックのマンションなのにほぼ決まった時間に簡単に出入りができるのか?何故こんな遅い時間に来るのか?誰なのか?目的は?それだけが知りたかった。 「そもそも…これは何だ?」 よしかが初めてその袋の中身にやや興味を持った。乱雑に3つの袋を破ると戸惑うことなく3つの小瓶の蓋を開ける。色は皆オレンジ色。形も全く同じ。中の説明書きも3枚とも同じ内容。 「全部同じかよ。わざわざ3日に分けて遅い時間に配達する意味があるのかよ。」 その得体の知れない何者かの行動に、苛立ちがMAX に到達する。 説明書きには 『オレンジ色のサプリ…イライラを鎮める効果があります。』 と書かれている。 「…なめてんのか?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加