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少し迷ったものの、雨が強くなってきたのでお言葉に甘えさせてもらうことにした。 大きな紺の傘に入れてもらい、翠くんと肩を並べて歩きだす。 ……とはいっても、身長差がありすぎて、実際肩は並んでなんていないんだけれど。 ……翠くん、やっぱり大きいなぁ。 近くに来ると、実感する。 啓大くんも背が高いけど、翠くんはさらに高い。 でもただ大きいだけじゃく、バランスのとれた背の高さで…… 何頭身あるんだろう? 本当にモデルになれそう。 それも、めちゃくちゃ売れっ子の。 「ちょっと花菜ちゃん、じーっと見すぎ……」 翠くんの顔を見上げながら歩いていると、翠くんが困ったような照れ笑いをした。 「あっ……! ご、ごめん……!」 慌てて視線をそらす。 「んーん、花菜ちゃんに見つめられるなら本望なんだけどさぁ。 ドキドキしちゃってこいつら落としちゃいそうで」 大事そうに抱える腕の中には、もちろん子猫2匹。 暴れることなく安心したような様子で翠くんの胸元に顔を埋めている。 「……この子たち、飼うの?」 そう聞くと、翠くんは頭を振った。 「そうしたいのはやまやまなんだけどね、育てられる自信ないから。 しばらくしても飼い主現れなかったら、里親を募集しようかなぁ」 「……そうなの?」 ……意外。 「飼うに決まってるじゃーんっっ!!」とか、ノリノリで答えるかと思ったのに。 「ほら、うち、親はほとんど家にいないでしょ。 俺も最近は部活で遅くなることが多いから、淋しい思いさせたくないんだよね」 「……うん」 そっか。 翠くんはちゃんとわかってるんだ。 生き物を育てるという責任。 この子たちにもちゃんと心があるってこと。 きっと、自分が経験したような、辛い思いはさせたくないんだよね……。
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