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「ねえ、花菜ちゃん」 信号待ちで並んで立っていると、翠くんが突然真面目な声を出した。 「? なに?」 「こいつらさ。 すぐに飼い主は見つからないだろうし、どうしてもしばらくは俺ん家で面倒見ないといけないとは思うんだ。 だからさぁ」 「……うん?」 「いつでもいいから、俺ん家、遊びに来て?」 その台詞に、きょとんとした。 「えっ……もちろん行くよ! ?……なんで? そんなあらたまって……」 傘が邪魔して翠くんの顔がよく見えない。 でもなんだか翠くんは、さっきまでのいつもの様子と少し違っていて……。 「ズルいかもしんないけど、少しだけ啓大から花菜ちゃん借りちゃう。 ……ダメかな?」 「……え……」 「猫のこと、俺と花菜ちゃん2人だけの内緒にしようよ」 「な、内緒……?」 「……うん!」 その言葉の真意はわからない。 だけど、ふと傘を持ち上げて私を見下ろす翠くんの表情が、すごく男の子っぽく見えてーー なんだか、ものすごく。 ものすごく、 ドキドキ、した。 「よしっ、青だよー! 渡ろっ!!」 「う、うんっ……!」 変な気持ち。 自分でもわからない、おかしな気持ち。 なんだかまるで、啓大くんと一緒にいるときみたいな胸の鼓動が……。
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