945人が本棚に入れています
本棚に追加
E組の教室の前で、私はピタッと足を止めた。
閉ざされた扉の向こうから、小さな呻き声が聞こえる。
「?」
誰だかわからないけど、女性の声。
なんだか少し苦しそうな、何かに耐えているような、でも耳を澄まさないとわからないくらいの小さな声。
一瞬躊躇してから、私は急いで扉の取手に指をかけた。
ーー誰か怪我でもして動けないのかも……!
「だ、大丈夫で」
すか……っ!?
最後まで言い終わらずに、私はカチンとその場に固まった。
……え……!?
途中まで開けた扉の向こうの光景。
それをすぐに理解するには、私には知識と経験値が足りなすぎて。
なに……!?
なに……!?
なにしてるの……!?
女の子1人じゃなかった。
教室の隅で、壁を背にした女子生徒に密着している男子生徒。
女の子の制服のシャツは捲りあげられ、服と肌の隙間に男の子の手が入り込んでいる。
短いスカートから覗く太ももがやたら艶かしく……
「……!」
2人が濃厚なキスをしているのに気付いた瞬間、私の脳はやっと覚醒した。
う、嘘……っ!?
あり得ない現場に突入してしまった。
生のラブシーン。
しかも2人は世界に入り込んでいるのか、私に気付かずさらにエスカレートしていく。
ど、どうしよう……!?
とりあえず、知らないふりして扉閉めて逃げるしか……!!
最初のコメントを投稿しよう!