4

4/11
前へ
/65ページ
次へ
くるっと向きを変え、走って逃げようとしたそのとき。 「……きゃっ!?」 「わっ!?」 いつの間にか目の前にいた人物と思い切りぶつかって、尻餅をついた。 「い、痛た……、す、すみませ……っ」 涙目で見上げて、ぎょっとする。 「け、啓大く……っ」 「……いってぇ……」 「な、なんでこんなところに……!?」 啓大くんは私が思い切り頭をぶつけたらしい胸の辺りを手でさすりながら、眉間にしわを寄せた。 「は? それはこっちの台詞だろ。 俺は自分のクラスに戻ろうとしただけで……」 「あ」 そっか。 そうだよね。 衝撃シーンを見たせいで、啓大くんのクラスまで会いに来たんだってこと忘れてた。 「け、啓大くん、なにか忘れ物?」 「筆箱忘れたっぽいから教室ん中に取りに……」 「!!」 私は啓大くんの腕をガシッと掴まえた。 「い、今はダメっ!! も、もう少ししてから……」 「え?」 「いいから! っていうか筆箱なんてなくたって平気でしょ、一緒に駅まで帰ろ?」 「いや、宿題とかあるし」 「ぺ、ペンくらい家にもあるでしょ?」 「ペンはあるけど、消しゴムがねーんだよ」 「え、えっと」 次の台詞が出てこない。 ど、どうしよう。 どうしよう。 あんなシーン、啓大くんに見て欲しくない…… でも、うまい言い訳が……。 「!」 ぐるぐる考え込んでいる間に、教室から例の2人が顔を出した。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

945人が本棚に入れています
本棚に追加